「シンガポール人らしさ」は存在しない
ズバリと私に言ったその人は、中華系シンガポーリアンの友人。
シンガポール国立大学在学中に岡山と京都に留学し、日本語、英語、中国語を完全に使いこなす。流暢な話しぶりのいたるところに、深く鋭い意見や主張が感じられる。
つまりものすごく賢い人の面白い話。
彼はシンガポールと日本について、たくさん話してくれた。その中で特に印象的だったのがこの「シンガポール人らしさ」は存在しない、という話。もちろんこれは彼の意見であって、最適解ではない。
多民族多文化国家、言語も文化も見た目もバラバラな人が集まって、なかでもエリート集団が先導して今の姿がある小さな大国・シンガポール。だから、日本人みたいに「平たい顔の民族」とかひとつでくくれない。
みんなちがってみんないいby 金子みすゞ! を地で行くシンガポーリアン。
「そうか。シンガポール人らしい顔って、ないんだ。じゃあ私もシンガポール人になれるかも」
5年前に彼からこの話を聞いた私の最初の反応。その半年後に、私はシンガポールに到着した。
なんてシンプル! いや、単純!
その結果、話で聞くのと実際に見て感じることは、だいぶ違ってた。
シンガポール人の名前
さっきの話の彼の名前は、マイケル(仮名)、イングリッシュネームだ。
名字は劉で、マイケル・リュウ。中華系なので、平たい顔の民族。
そして彼の友達はクリスティ・ウン(仮名)。ウンはアルファベットではNgとつづる、シンガポールでは高橋と佐藤くらいよくある名字。あとTangも多かった。
クリスティも、同じくイングリッシュネームの中華系シンガポーリアン。
このあたりで興味がムクムク膨らんで質問した。「中華系の名前はないの?」「ないよ。シンガポールは英語圏だし、必要ないから」即答。マジかよ。
必要があるかないかで、自分の名前を考えたことがなかった。
「あんたのイングリッシュネームは?」「ないよ」「あった方がいいよ。必要だから」
そんな理由で新しい名前なんてッ!!
アンジェラって呼んでね、とか自分で言うのか。
言えないや。
5秒考えて、和名で生きていこうと決めた。
ところがそこから、例外だらけ
シンガポーリアンはイングリッシュネーム。わかりやすい。
甘かった。
職場の同僚に、「JKって呼んでください」って言われて、確かに周りもそう呼んでた。
JKってなに? って聞いたら、ジンカン、って言うんだけど、中華系の名前は呼びづらいから、JKにしてる。漢字2文字で書くよ。
イングリッシュネームはッ!!
ないない。両親がつけなかったから。
そんな彼の名前はジンカン・チャン(仮名)。全て漢字もあるらしい。
わかりやすく中華系の名前もあるんですね。ふむ。
トドメはニックネーム。
アグネス、とみんな呼んでいて、社内の公式メールや文書にもアグネスと表記されているのに、アグネスは彼女が自分でつけた単なるニックネームで、本名はウェイレイ・ウォン(仮名)だった。
「だってウェイレイって可愛くないんだもん」
そんな理由!? 可愛いかどうかの判断基準!!
社員リストにはアグネス・ウォン、で登録されていた。
しかし、住民票や銀行口座の開設には本名じゃないといけないらしい。
これらのシンガポーリアン達と出会って話して感じたことは、彼らの名前は名付け親に大きくよるらしいってこと。
同じ中華系の家族でも、家の中での会話が英語オンリーもしくは中国語・広東語・客家語オンリーに分かれる。
英語で話す家庭は、子供にイングリッシュネームを授ける。そして中国語各種の家庭では、子供に中華系の名前を。
グローバル人材とか個性とかすっとばして、単に自分たちが呼びやすいからじゃないだろうか。
日本人って、自分の名前を大切にする民族なんだなあと、こういう時に相対的に感じた。
それと同時に、必要ないから、分かりにくいから、気に入らないから、そんなノリでサクッと改名してしまう、シンガポーリアンの気軽さも好きになった。
シンガポール人の名前に関する参考文献はコチラです
友人ししもんのイチ記事が、シンガポーリアンの名前(改名)文化に言及していた。
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