28歳新卒フリーター女もシンガポールで就職してみた⑧

第四章

 ひとつめのスピード内定からのスピード辞退、その翌日。
 気を取り直して、就職活動を開始した。シンガポールでの現地就職といえば、就職エージェントによるサポートは必須。というししもんさんの転職指導をそのまま実践してみた。
 具体的には、日本人向けの日系就職エージェントに日本語で対応してもらう。エージェントのサイトで申し込みフォームに必要事項をぽちぽち入力して「送信」をクリック。するとすぐに「はじめまして、あなたの担当です」という顔も声も知らない人から、どしどし情報が送られてくる。もちろんすべて日本式の日本語なので、海外で仕事を探しているという感覚は、まだない。
 メールや電話でのやりとりの後は、エージェントのオフィスに行って面談をする。そこでさらにどしどし求人情報を提供される。エージェントの担当者に英語版のレジュメや日本の履歴書などの書類をデータで送って、エージェントにすすめられるままに企業での面接がサクサクと段取りされた。

 「複数のエージェントにコンタクトを取って、同時進行で進めていった方が効率がいいよ。担当との相性とかあるし、エージェントごとに持ってる求人情報も違うから。」というスーパー具体的なししもんさんアドバイスにすみやかに従って、複数のエージェントから毎日のように面接の予定が入ってくる。
 これらのエージェントによるサービスは全て無料で提供される。エージェントは雇用契約が成立した時に、企業から人材紹介料としてギャラをもらう。そのギャラも、雇用契約の月給1ヶ月分とか半分とか、そんな感じらしい。もっと言うと、シンガポールでは仕事を始めるのも辞めるのも本人の気分でやってのけちゃう雰囲気があるため、入社日から3ヶ月経過するまでは、ギャラは発生しないらしい。(このあたりは友人数名から聞きかじったものなので、あくまで参考程度に)
 つまり、例えば私がエージェントAのBさんに紹介してもらったC社に入社して、月給3000ドルスタートだった場合、勤続4ヶ月目に達した時点でBさんの実績になり、C社からエージェントAに私の月給とレートを換算したギャラが発生する、と。

 まあそのあたりは就職希望者には全然関係なくて、無料でフルサービスを受けられるのがシンガポール式転職活動、というわけです。
 そして私は、IT企業、物流会社、お土産屋さんで販売スタッフなどなど、面接をアレンジしてもらえれば、地下鉄とバスを乗り継いでどんな企業でも行った。そして落ち続けた。面談や面接アレンジなんかはものすごくきめ細やかにエージェントがやってくれるけど、企業での面接は孤独な戦いだ。面接官は日本人だったりシンガポール人の人事担当者だったり、いちばんやっかいなのは日本語で話しだして途中から超流暢な英語に切り替えてくる敏腕日本人駐在員だった。
 英語は最低限勉強してきだけど、実践会話なんか全然慣れない。話せない。さらに緊張がのしかかって、カタコトになる。私の場合は、日本での経歴が弱くてアピールにならなかったこともあった。
 とにかく散々だった。このあたりから、海外就職の現実と厳しさを実感しはじめる。受けた面接は6週間で二桁を超え、全部落ちた。最後の方は毎晩泣いて、スマホにかじりついて日本の家族や友達に帰る帰ると弱音ばかり吐いていた。

 「やっぱり無理だったんだ。海外就職なんて」
 あきらめかけて、日本に帰ろうか、と絶望していたどん底で、面接で一発合格を果たした。日系美容サロンのエリアマネージャーという仕事だった。

 日本を離れて、ちょうど2ヵ月が経過していた。
 結末を先に言ってしまうと、このエリアマネージャー業務は約40日で終わった。いろんな意味で。

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ゆきの

ゼロからいきなり海外転職も9年目。香港、カナダ、シンガポール、中国で現地採用、起業、さらには大学院留学まで。独学でTOEIC910取得、HSK6級合格。泣いて笑ってそれでも生活は続く、中国深センのリアルな日常を発信します。

シンガポール現地採用エッセイ
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