28歳新卒フリーター女もシンガポールで就職してみた 14

第六章

シンガポールの国土の横幅は、東京都内で例えるなら中央総武線の西荻窪から小岩のちょっと先くらい。

コンパクトシティという便利な面と同時に、遠出ができないので、正直飽きる。
遠出をするイコール出国、という距離感で、私は古びた直行バスに乗って陸路で隣国マレーシアに遊びに行くことに一時期ハマった。

ジョホールバルというマレーシア最南端の街は、シンガポールから2本の橋がかかっていて、車で行ける外国だ。
ブギスというシンガポールの若者エリアから片道3ドルちょっと(240円)で1時間くらい乗っていれば、イミグレーションでおろされて、パスポートをカウンターに出して出国、またバスに乗っておろされて、今度は入国。

バスで1時間分遠くまで走るだけで、パスポートにスタンプが増える。いちばんハマった頃は、週に2回くらい通ってたなあ。

イミグレーションを越えて無事にマレーシア側に入国すると、ガラス張りでムスリム文化の象徴である幾何学模様がちりばめられただだっぴろいホールに出る。
だだっぴろさ、というのはぜいたくに土地が使える豊さを表している気がする。つまり、田舎ってことなんだろうなと。

そこからさらに空中通路を進んでいくと、巨大ショッピングモールにたどり着く。イミグレーション直結の経済活動。
スタバ、H&M、レストラン街があって、ネイルサロンからマッサージまで。
それらが全て、シンガポールと比べて半額以下になる。

当時のレートで、100シンガポールドル(約8000円)を両替すれば270リンギット(約8100円)くらいにはなかった。
シンガポールで7ドル(約560円)するスタバの限定フラペチーノが、ジョホールバルに行けば7リンギット(約210円)で飲める。
洋服やネイル代もそんな感じで、とにかくシンガポールより超安い! の一択にハマった。

治安が悪いので、街中をぶらぶら散歩、というのができないのがちょっと残念だった。
車はあふれかえるように走っているのに、歩道を歩く人はゼロ。
噂でしか聞いたことないけど、二人乗りの原付が歩行者の後ろから迫ってきて、ひったくりとかあるらしい。こえーよ!

結局は安全なショッピングモールの中をぐるぐる歩くだけなんだけど、なんでも安くて、ためらいなくどんどん買えるのがスカッとした。普段はあまり好きじゃない買い物が楽しかった。

物価といえば、私が暮らしている間に、シンガポールは世界一の高物価大国になっていた。
駐在員が借りる高級マンションであるコンドミニアムは3LDKで30万円、4LDKで月40万円くらい。

現地採用社員がそんなところに住めるはずもないので、3LDKを3人でシェアという共同生活。それでもひとり10万円だ。
私やししもんさんが住んでたシェアハウスは、学生寮みたいなものを想像してもらえればわかりやすいと思う。通路がひとつあって、両側に個室が並んでる。8部屋あったかな。
シャワーとミニキッチンは共有。私の部屋は3畳で4.5万円くらいだった。光熱費とwifi利用料込み、それから共有部はメイドのおばちゃんが週2回掃除してくれるサービスもついていた。

メイドのおばちゃんはししもんさん曰く「中国からの出稼ぎ労働」らしい。
カタコトの英語か、聞き慣れない中国の方言かで何度か話しかけられたけど、ごめんおばちゃん、分からんわ、と心の中で思いながら、サンキューと言って自分の部屋に退散していた。

おばちゃん、掃除の仕上がりが毎回違って、すげー面白かった。ぴかぴかに床を磨き上げる日もあれば、スマホいじって時間つぶしてゴミ捨てだけしてさっさと帰る日もあったなー。
掃除・洗濯・料理はしてくれるだけでマジ感謝、ノー文句。を掲げる私なので、なんっの気にもならなかった。

むしろ、
仕事ってこんなもんだよなー、気分乗る日もマジやる気ない日もあるよなー、そんなんでいいんだよな、とアジア的働き方をまたひとつ学んだ。

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