28歳新卒フリーター女もシンガポールで就職してみた 12

サービス業という職業の特徴は、シンガポールでも日本でも大差ない。

早番と遅番のシフト制、休みは平日と週末に一日ずつというカレンダー通りにいかない不規則な勤務形態。そのため新しい友達ができてからも、1人で過ごす時間は多かった。
人が少なくていい、週末より安いランチメニューがある、銀行に行ける、といった小さな理由を積み重ねて「平日休みラッキー」と思える思考回路なので、1人ポツンとした感覚より気楽さが圧勝する。

外を歩くと暑くてうっかり熱中症になることもある常夏の国では、地下鉄やバスに乗ってショッピングモールに行ったり、ローカルフードを探し求めたり、平和で安全な国を探索して楽しんだ。
リトルインディアにはインド人がぎっしりいるし、チャイナタウンの路地裏では中華系のおじいちゃんおばあちゃんがダラダラしている。徒歩やバスで行ける範囲で、ちょっとした旅行気分になれる。

そんな風に自分ひとりできっちり完結していた生活にある日やってきた、シンガポールで初めての友達・リカちゃん。食事に誘われて、ものすごく浮かれて喜んだ。

わー女子会ってやつかな? でもふたりなら女子「会」じゃないのかな? どこにいこうかな? 楽しみだなー。ひとりで浮かれまくった。

リカちゃんは可愛くてオシャレで、シンガポール生活のアレコレを私に教えてくれて、でもちょっと天然で面白い。リカちゃんはシンガポールで生まれて育った日本人なんだけど、日本語は家庭内会話で学んだのみ。ローカル校と呼ばれるシンガポール式現地校でずっと勉強してきた人なので、私が俄然知りたいシンガポール教育事情をなんでも聞かせてくれた。

シンガポールのことも仕事のことも、なんでも教えてくれるリカちゃんだけど、日本語がちょっとズレているのが天然ぶりを発揮していた。「○○部長って、うちの会社の、例えるならアレだよね、電信柱!」って。リカちゃん、会社を支えるにはちょっと太さが足りないかな、電信柱!

言いたいことは分かるんだけど正解ではなくて、その感覚が面白かった。電信柱。それから何度かニヤニヤしながらリカちゃんに「例えるなら、なに柱だっけ?」って聞いてみたけど「あ! それね! 思い出したのにまた忘れたーあああ」って毎回頭を抱えていた。そして正解をリカちゃんの口から聞くことはなかった。

友達ってありがたい。ひとりで出かけることも食事をすることも、なんとも思わないしむしろ自由度高くてワクワクする性格なんだけど、誰かと過ごす時間もいいなってしみじみ思った。

ガールズトークで盛り上がるのかな。リカちゃんは彼氏いるのか聞いてみたいな。いよいよ今夜だな、ワクワク。

研修期間中にも関わらずマックスうわの空で仕事をしていたら、文房具売り場にリカちゃんの姿が見えた。あ、あのね女子会のことなんだけど、と話しかけようとしたらすかさず

「あのね、兄も一緒にいいかな?」ですって。

兄ー!!! 
内心驚いたけど、もちろんいいよと笑顔で返事した。
さよならシンガポールでの初女子会。

リカちゃんイチオシの和食レストランに2人で先に入って待ってたら、遅れて登場してた兄。
超びっくりした兄。
全然似ていない兄。
例えるならまるで、スラムダンクのゴリと春子さんのような兄妹だった。

これがリカちゃんに続く、私の中での大きな出会い。その名もゴリ兄ちゃん。

このゴリ兄ちゃんがスーパー明るく社交的、ものすごく交友関係が広い。
かたや、スーパー明るいという共通点はあるけど、人から好かれることも毛虫のように嫌われることもあるのでひとりを好む私。
そんな私をいろんなところに連れ出してくれたゴリ兄ちゃん。

これをきっかけに、私はまだ見ぬ大海・シンガポール日本人コミュニティにザブンと飛び込んだのだった。

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