※このエッセイは、ししもんさん著作のシンガポール現地採用エッセイの続編です。
本文にししもんさんがちょいちょい出てくるので、合わせて読むとさらに現地感が増します。
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28歳新卒フリーター女もシンガポールで就職してみた①
第1章
2012年の春、私は東京の大学を卒業した。
うっかり26歳だったけれども。
私立大学の通信教育部でのんびり楽しく過ごしすぎた。中央線と西武新宿線に挟まれた中野区らへんで一人暮らしをしながら、新宿区は大久保のコンビニでバイトして、バイト先では副店長になってた。その頃の大久保といえば韓流ブームがものすごくて、韓流スターのコラボ商品が店頭に並んだら即完売だった。大久保通りから職安通りに抜ける路地のひとつが「イケメンストリート」とか名付けられたり。バイト帰りに何回か探しに行ったけど、見つからなかったなあイケメン。
1600字以上の課題レポートを締め切りまでに提出すれば、学校に行かなくていいという通信教育部のメリットをフル活用して、たくさんバイトしてお金を貯めて、格安航空券を見つけてはひとりで海外旅行をしたりもした。韓国、アメリカ、ひとり卒業旅行は南米にまで飛び出した。
東京は楽しかったし、ひとりで旅する海外は経験値がぐんぐん上がっていく感覚がたまらなかった。大学の友達もバイト仲間もよく遊んでくれたし、楽しい毎日だった。
いやでも、そろそろ、と思い立ったら卒論書いて提出して、教授たちからダメ出し連発でギリギリ単位をもらってなんとか卒業させてもらった。
卒業するのは全体の20%と言われる通信教育部だったので、卒業するだけで周りは大喜びだった。
就職とか新卒とか、すっかり後回しで、誰も全然気にしてなかった。
とはいえセオリー通りに就職活動もしてみたけど「26歳? 新卒? なんで?」と採用担当の人にあからさまに首をかしげられた。なんでと言われても、22歳じゃないというだけで否定される理由がわからなくて、困った。
飯田橋のハローワークに行って、企業に面接をしてもらう段取りをつけてもらったんだけど、帰り道にハローワークから電話が来て、なんでもその企業は浪人生は採用しないんだそうだ。18歳で大学に入って、22歳で卒業した人以外は面接すら受けられないらしい。呆れて何も言えなかったし、そんな企業で働きたいとも思わなかった。
その結果、新卒入社というゴールデンチケットを放棄することに決めた。
「大学卒業後、3年以内は新卒入社と認められるんですよ」とハローワークの人が教えてくれたけど、私の手元にもそのゴールデンチケットは確かに届いたけど、よく見たらそれはくしゃくしゃでボロボロで、効果を発揮するどころか逆効果だと思った。そんなのにしがみつかなくてもいいや、とあっさり手放した。
まあ、楽しかったし。教員免許も取ったしバックパッカーで世界をたまに旅して英語も身につけたし、後悔はない。
しかしどうにも仕事がないのが現実。仕事がないと収入がない、生活できない。
東京は家賃をはじめ、生活費だけでお金がかかる。バイトのシフトを増やしたり、かけもちしたりすれば生活することは維持できる。でもフリーターで生きていくのは嫌だし、かと言って26歳新卒は入社試験でツッコミ連発されて、なぜかやたら不利だし。うーん。
生活、将来、仕事、いろんなことをまとめて悩んで考えた結果、
さらなる変化と刺激を成長を求めて、楽しかった東京での暮らしをやめることにした。